About usオープンエンジニアリングセンターがめざすもの

工学を開き、未然課題を解決する

多くの先進国が人口減少のフェーズに移行する一方、世界が情報によってつながる21世紀の社会は、これまで人類が経験してきたものとは大きく異なります。そこで、いまだ顕在化しておらず、その発生が社会に大きなインパクトを与えることが予想される課題を「未然課題」と定義し、この「未然課題」の予測と解決策の事前提示を本センターの目的とします。

未然課題についての記事へ

私たちは、科学技術コミュニケーションの手法を用いて、社会や市民とのあいだにこれまでにない接点を生み出し、工学を開くことで、「未然課題」を発見し、そして、それらをもとに未来の社会像(たとえば、高密度な都市社会と共存する低密度社会や、寿命が200歳までのびた長寿命社会など)を描き、当事者間で共有することを通して、未然課題を解決することを目標としています。

さらには、社会の未来と直結する科学技術のイノベーションに対し、多様かつ本来のステークホルダーが参加する状況を生み出し、その過程を通じて科学技術の(特定の人だけが利益を享受するのではないという意味での)民主化に積極的に貢献することによって、工学研究のさらなる進展を促します。

オープンエンジニアリングセンターでは、6つの取り組みの相乗効果により、新しい工学研究のアプローチの創造的発見を目指しています。

オープンエンジニアリングの
方法論研究Methodological Study of Open Engineering

創造性の模索を通して専門家内外の協働形態を類型化し、工学独自のコラボレーションや新しい知を生み出すための方法論を体系化します。そして、多様なステークホルダーがもつ共通のヴィジョンと価値観を考慮しながら、現在の社会が抱えている問題を把握し、解決へのイノベーションを起こす方法を模索します。

  • STAGE.1

    適切な対話相手やコミュニティの特定およびネットワークの確立、またはすでに確立されているネットワークを利用した拡張可能性の探求(図中の①)

  • STAGE.2

    適切なステークホルダーとの信頼関係の構築と、科学技術に対するニーズや態度、期待、懸念などの抽出(図中の②③)

  • STAGE.3

    科学技術と未来社会についてのヴィジョンや価値観の共有または創出(図中の③④)

  • STAGE.4

    複数のステークホルダーとの協働を通じた共通のヴィジョンを実現するための持続可能かつ革新的なアクションプランの設計(図中の⑤)

マイノリティリサーチMinority Research

特定の属性をもった集団(特定の課題にセンシティブな集団)の調査を通じて、社会全体や他集団では顕在化していない未然課題を抽出し、当事者による議論のプロセスのなかから真に市民が望む課題解決の方向性やイノベーションの芽を見つけだすことで、誰も取り残さない工学を実現します。

フリンジリサーチFringe Research

社会課題が顕在化しやすいフリンジ地域の調査を通じて未然課題を抽出します。フリンジ地域には、①先行地:社会変化が他に先んじて現出している場所、②界面:異なる気候帯やプレート、共同体などがぶつかる場所、③極地:最も○○な地域、異常気象の発生地などの極端な環境が挙げられます。

(写真/サイクロンによって破壊されたアラビア半島オマーンの伝統家屋)

社会受容性の向上Improvement of Social Acceptability

社会実装前の技術について市民に実態を伝えることを通じて、市民が技術の是非を判断する際の視点(提供すべき情報)を、また、市民の議論のプロセスより、技術が導入する際に生じうる未然課題をELSI (Ethical, Legal, Social issue)の観点より抽出します。実装時に予期される社会の反応を研究段階から把握することで、社会受容性の高い技術開発を支援します。

(写真/産技術研究所の地域連携活動で使用したツールを活用した未然課題抽出ワークショップ)

実証実験と実装Demonstration and Implementation

研究所内で行われていた研究を実際のフィールドにおいて実証実験あるいは社会実装し、現場から直接のフィードバックを得ることで、新たな未然課題の抽出や専門領域の横断、専門技術の可視化および共有を通してさらなる研究の展開を試みます。

(写真/地元漁業従事者と研究者によるROVを用いて行った合同海底調査)

コミュニケーションチャンネルの形成Connecting Communication Channels

生産技術研究所内組織との連携および大学他部局組織や外部研究機関との協働、そして地域連携などネットワークづくりを積極的に進めることによって、学術・企業・社会間の有機的なエコシステムを構築し、工学が社会をよくするだけではなく、社会によって工学がよくなるという相互作用を引き起こすための方法論を模索します。

(写真/駐在型研究拠点「地域ラボ」における地域の活性化に向けた実践的取り組み)